1ハゼは「予測」できるか?——複雑系物理学とAIで挑む焙煎の臨界点


Aillio Bullet R1 V2

ここ数年、手網焙煎にはじまり去年から家におけるコンパクトな焙煎機Aillio(Aillio Bullet R1 V2)を購入して珈琲豆を焙煎している。本記事の検証で紹介するデータもすべて、この Aillio Bullet R1 V2 の焙煎ログを使用している。

Aillioには専用の焙煎ログアプリのRoasTimeがあるが、自由の幅の多いArtisanに乗り換えてからWebsocketでリアルタイムに焙煎ログを飛ばせることを知る。 とてもおもしろそうなので、Websocketで飛ばしたログをリアルタイムに表示する焙煎実況アプリを作ってみることにした。

AI真っ盛り、焙煎ログをリアルタイムで可視化するだけでは面白くないので、AIで1ハゼの予兆を検知できないか、検証機能も実装した。

カオス理論と焙煎の出会い:CSD(臨界減速)理論

コーヒーの焙煎において、豆の組織が破壊され水分が気化する「1ハゼ」は、急激な熱変化を伴う暴れ馬のような現象。1ハゼ周辺の温度管理が重要であることを理解し始めたので、そのタイミングを予測できないかと考えた。

そこでGeminiに聞くと、気象学や生態系などの複雑系科学で用いられる臨界減速(Critical Slowing Down: CSD)理論がサジェストされた、おもしろそう。

CSD理論では、「システムが急激な変化(相転移)を起こす直前には、元の状態に戻ろうとする回復の遅れが生じる」とされている。これを焙煎プロセスにおける1ハゼへの相転移と重ね合わせる。

予兆を捉える:自己相関と分散

この「回復の遅れ」を数値化するため、システム内部では主に以下の2つの指標をリアルタイムで監視する。

  1. AR(1) 自己相関: 状態の回復が遅くなり、直前の状態を引きずる度合いの上昇。
  2. 分散(Variance)のローリング計算: システム全体の「揺らぎ」が大きくなる現象の検知。

これらの指標が一定の閾値を超えた瞬間、アラートを発し焙煎の臨界点が近いことを知らせる。

検証データ:過去ログによるバックテスト

過去に蓄積した数十回の焙煎ログ(.alog 等)を用いたバックテストの結果、このCSDアルゴリズムは、実際の1ハゼ発生の30〜120秒前(リードタイム)に、悪くない精度で検知できていることが見えた、データからも解析も一瞬でClaudeやってくれる、便利すぎる。

豆の水分量や投入量によってリードタイムに幅はあるが、「もうすぐハゼる」という準備を整えるには十分な時間的猶予だ。

現在のステータス:まだまだはじまったばかり

バックテストでの良さそうな結果は見えたものの、まだまだ実験段階。引き続き焙煎を続けて良さそうな塩梅を見つけていきたい。


焙煎実況アプリはこちらからご覧いただけます: ☕️ ARIGATO COFFEE ROASTERY

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